ファストファッション業界は、2013年に起きたバングラディッシュ崩落事件を契機に、世界的にその特有の生産形態を、近年大きく変えつつあります。
また、昨今ではSDGsの考えも、経営戦略上重要と携えており、ユニクロの他にも注目するべきファストファッションが続々と台頭してきています。
一方、ユニクロは、新疆ウイグル自治区での強制労働がアメリカのシンクタンクから問題視されるなど、経営上、大きな課題を抱えていると評されています。
そのため、今後、ユニクロ以外のファストファッションのご利用を、検討してみても良いかもしれません。
今回は、そんな注目のファストファッションブランドを、SDGsに注力しているかどうかという点も含めて、ご紹介させていただきます。
ファストファッション業界が抱える課題とは?
まず、ファストファッション業界が抱える現在の課題について、みてみましょう。
先述の通り、そもそも、ファストファッション業界が抱える諸問題が、世界的に露呈し、問題視された事件が、2013年に発生したバングラディッシュ崩落事故と言われています。
この事件は、世界的なアパレル企業の下請け工場が多数存在していたビルで起きた、ファストファッションブランド業界史上、最悪の事故となっており、1,000人以上の死傷者を出すなど、その被害の大きさから、今でも「ラナプラザの悲劇」として伝わっています。
この事件は、この建物が倒壊の危険性があったのにも関わらず、オーナーが何も対応をせず、これを知って出勤拒否をした労働者に対しては、解雇をちらつかせ、逆に24時間働かせて対応していた点が、大きな問題点として指摘されています。
このため、世界的にファストファッション業界は、国際的な非難を背景に、これまでの生産工程の見直しを余儀なくされています。
つまり、従来の当たり前と目されてきた過剰在庫、大量廃棄、賃金の低い発展途上国での生産という、これまでの潮流を転換させる流れとなっていきました。
そのため、これ以後、ファストファッション業界の主流は、コスト重視から環境重視及び透明性重視に転換していきましたが、さらに、追い打ちをかけるような事件が、現在まで、発生していることが明らかとなっています。
この代表的な事件として、新疆ウイグル自治区での強制労働問題が取り上げられています。
参照元:Bloomberg News
新疆ウイグル自治区では、強制労働が国際的な問題となっており、2018年には、少なくとも57万人のウイグル族の人々が、中国の強制的な労働訓練を通じて、綿花の収穫に送り込まれたとされています。
この事実が確認されたとして、アメリカ政府は、2021年1月に、ウイグル自治区で生産された綿製品の輸入を禁止する措置を講じています。
ユニクロを展開するファーストリテイリングも、この件関して批判されており、トップである柳井氏は、「これは人権問題というよりも、政治的な問題のため、ノーコメント」としており、実質的には、この問題を追認していると思われてもしょうがない態度を示しています。
確かに、ファーストリテイリング自体、トップダウンでサスティナブルを意識している企業であり、近年はSDGsとしてリサイクル活動の一環として、回収した製品の一部を、72の国と地域に寄贈していたり、仕上げ加工時の水消費量を最大で99%削減したデニムを開発し、環境に配慮した姿勢をステークホルダーやユーザーに示したりと、SDGsの流れを組んだ経営をもちろん展開しています。
また、中国では、現在約700店舗を展開しており、ZARAをも凌ぐブランド力という評価を得ています。
2024年8月期には、約1,200店舗まで伸ばす計画もあり、今後もファーストリテイリングの事業が拡大していくものと言えます。
しかし、ユニクロと言え、この新疆ウイグル自治区での強制労働問題での対応を間違えると、予想だにしない程の大きなダメージを被る恐れがあります。
そのため、ユーザーとしては、今後は、ユニクロ以外のファストファッションにも、注目していく時代に突入していると言えるでしょう。
ユニクロ代替となるサスティナブル(SDGs)に注力しているファストファッションブランド【4選】
では、サスティナブル社会を常に提唱しており、さらには問題提起を行っているユニクロ以外に注目されているSDGsに注力しているファストファッションブランドをみていきましょう。
ユナイテッドアローズ グリーンレーベル・リラクシング(GLR)
ユナイテッドアローズは、同社内にサスティナビリティ推進部門を新設するほど、SDGsに注力しているファストファッションブランドのショップを運営するアパレル運営会社です。
こちらの会社が運営しているショップブランドであるグリーンレーベル・リラクシング(GLR)は、様々なコンセプトにピッタリとフィットした自分らしい何かがみつかる「Be happy」をコンセプトにしています。
このコンセプトは、社会問題に目を向けた「SOCIAL」と、未来の地球環境を守るための「EARTH」の2つの観点から、これを実現させようと取り組んでいます。
では、それぞれについて、みてみましょう。「SOCIAL」に関しては、以下のようなショップ運営を展開しています。
SOCIALでは、「KIDS 1% チャリティー」という、GWとクリスマスの時期に行う期間限定のキャンペーンが、GLRの店舗で開催されています。これは、グッズ売上の1%を、子供の貧困や虐待などの社会問題に取り組む認定NPO法人フローレンスへ寄付しており、社会貢献活動の一環として位置付けられています。また、「被災地支援プロジェクト」として、
GLRで扱う製品の一部を、津波被害により稲作ができなくなった農地で生産されたコットンを使用することで、被災地を支援しています。これは、東北コットンとも呼ばれています。
また、「EARTH」に関しては、以下のような多様な形で、これを実現させています。
元々、2008年から「Reduce Shopping Bag Action」という、買い物の際に、マイバッグを使用すると、1回につき10円を一般社団法人more treesに寄付する活動を推進していたこともあり、ユナイテッドアローズでは、早期から環境に配慮した取り組みが活発化していたことが分かります。
このように、「SOCIAL」と「EARTH」の2つの活動を通して、SDGsの概念をファッションブランドのショップ運営を通して実現させています。
販売店舗は、関東を中心に多数店舗は運営されており、オンラインでも容易に購入することができます。
価格帯は、アイテムにもよりますが、おおむね数千円から1万円台となっているので、お手頃価格となっています。
そのため、SDGsの取り組むをファッションでも主張できる時代となっているので、興味のある方は、ぜひこちらのショップブランドを利用してみることをオススメ致します。
H&M(へネス&マウリッツ社)
H&Mは、ファッション性のある衣料品を、低価格で提供しているファストファッションブランドです。
一方で、パリ協定が採択された2015年の翌年である2016年から、SDGsサスティナビィリティとして、レポートを公表しており、早くから国際的な協調路線をとっているブランドとなっています。
同レポートでは、2030年までに100%リサイクル製品又は、その他の持続可能な原料を使用すると宣言しており、2040年までには、事業活動の全体を通して、環境に貢献する取組みを実現するとしています。
現在、最もこの取り組みに注力している分野が、コットンの栽培だとされています。
H&Mに限らず、アパレルブランド全体の問題でもある衣料の原料となるコットンの栽培は、大量の水を消費しており、この問題の解決から、H&Mは積極的に取り組んでいます。
具体的には、オーガニック性のコットンや、リサイクルコットンなどへの転換を推進しており、水の消費量を低減させる活動に取り組んでいます。
また、直近では、以下の活動にも注力しています。
まず、H&Mでは、ポイント制を用いて、古着回収システムを店内で運営しています。
このシステムは、ユーザーに、ブランドに関わらず、不要となったシーツや衣類を1袋にまとめてもらい、これを3,000円以上の購入で使える500円オフのクーポン券と交換できるようなシステムとなっています。
このため、リサイクル活動を活発化させることに積極的に取り組んでいると評されています。さらに、「consciousポイント」という、H&M会員専用のポイント制度も運営しています。
これは、エコバッグの持参や、パイナップルの皮を使用した合皮やオレンジの搾りカスを使った繊維などのサスティナブル素材を使用した商品の購入などでも、ポイントが付与される仕組みになっています。
また、バングラディッシュの労働者に対しての賃金への配慮や、再生可能エネルギーを店舗へ導入、AIを使用したより環境負荷の少ないサプライチェーンの再構築などの活動に取り組んでいるとされており、今後もSDGsに注力したファストファッションブランドを確立していくもの推測されています。
2020年には、スウェーデンの店舗で、リサイクルシステム「Looop」の運用も開始しています。
これは、不要な古着を分解して、新しいファッションアイテムに変換する取組みとなっており、店舗内でリサイクル現場を間近で見られることから、心理的にもリサイクルの普及に繋がると目されています。
日本の店舗でも、導入されていくものとされており、さらに、サスティナブルの気運が高まっていくものと言えそうです。
価格帯は、数千円台が多く、お手頃価格となっています。
さらに、アプリでの購入だと割引となっているので、さらにお求めやすくなっています。また、公式サイトから、クレジットカード決済で、お手軽に購入することができるので、身近なファストファッションブランドと言えるでしょう。
ZARA(インディティックス社)
ZARAは、1975年に創業したスペイン発祥のファストファッションブランドです。
また、業界最大手とされているように、ユニクロに匹敵する世界最大のアパレルブランドです。
創業以来、カジュアルで安価な優れた衣料品を世界に提供し続けてきており、現代では、最も成功したファストファッションブランドの1つと評されるZARAも、パリ協定が採択された年である2015年以来、サスティナビィリティに特化した取り組みを推進しています。
例えば、2015年以降、24の地域に点在する800以上の店舗に、リサイクル店舗を設置し、同時に、顧客の自宅から古着を引き取るサービスを、スペイン、北京、上海で実施しています。
この結果、34,000トンを超える使用済み衣料を回収することに成功しています。
さらに、2019年には、全ブランドでのプラスチック製のショッピングバッグの使用を廃止し、代わりに再生紙を活用したショッピングバッグに移行するなど、よりSDGsを意識した取り組みを推進しています。
また、2023年までには、オフィスや店舗に出たゴミを再利用又は、リサイクルをする目標を掲げています。
さらに、2025年までに100%サスティナブル素材に変えるという目標及び、ZARAの本社、工場及び店舗で消費されるエネルギーの80%を再生可能資源にするという目標を掲げており、近年はより、SDGsを経営上不可欠な視点として、位置付けていると評されています。
参照元:ZARAアライアンスサイト
価格帯も数千円が主流となっており、こちらも公式サイトから、手軽に購入することができます。
公式サイトで販売されている衣料品には、同社が取り組んでいる製品基準である「Green to wear 2.0」が喧伝されており、製品の生産に伴う環境への影響を最小限に抑えることを目的とした製品作りに力を入れていることが伝わってきます。
そのため、SDGsに関心が高い若者のユーザーを中心に、今後も注目度が高いファストファッションブランドとなっています。
GLOBALWORK(アダストリア社)
GLOBALWORKは、2020年に創業から25周年を迎えた歴史あるファストファッションブランドです。
記念すべきこの年には、サスティナブルな社会の実現を目指す声明を発表しており、2020年春には、ポリエステル袋のショッピングバッグを終了し、サスティナブル活動の一環として、リサイクル100%の紙袋に順次移行することを発表しています。
これは、「全ての人々の幸せのブランド」というコンセプトの下、3つの指標を基に活動することとしています。
➀環境を守る
➁地球と成長する
➂人を輝かせる
さらに、今後は素材や生産過程から、環境を守ることに繋がる活動にも注力していくとしています。
そのため、より広い意味でのサスティナビリティの概念であるため、ファッションを通じて、地域との共生にも積極的に取り組んでいます。
例えば、2021年には西武ライオンズとユニフォームのパートナーシップ協定を締結しており、埼玉の地域活性化に貢献する球団をファッション面から支える活動も、サスティナビリティ活動の一環として取り組んでいます。
他にも、東京都港区に新たに開園した21世紀型の教育を行う総合スポーツ保育園の園児が着る園服の製作にも携わっています。
これは、保育園の運営者の方が、GLOBALWORKのサスティナビリティに共感したことがきっかけとされており、今後も、ファッションを通して、地域との共生を実現していく有力なファストファッションブランドと評されていく可能性が高まっています。
価格帯も安価で、ファッション性も高いので、SDGsに興味のある若者を中心に、ユーザーが増加していくことに期待できるブランドとなっています。
もちろんユニクロもSDGsは率先している…しかし
ユニクロに変わり得るファストファッションブランドをサスティナブル(SDGs)観点から見て自信を持ってオススメできるブランドをご紹介いたしました。
ただし、ここで声を大にして言わせていただきますと、批判にされされているユニクロは何もしていないどころか、むしろ率先してサスティナブルに対応している事はお伝えいたします。
ですので、ユニクロ自体がサスティナブル社会に力を入れていない訳ではなく、むしろ逆でSDGs活動に積極的に参画していることがサイトからも伺えます。
しかしながら、政治的な判断もありますが今回問題となっている新疆ウイグル問題に関する回答が「ノーコメント」だと消費者目線で考えるとどうなの!?と感じてしまいます。
グローバリズムとしての繁栄を共存する社会は理想ではあります。
しかしながら、14億とも言われている中国の消費者から背を向けるかと言うとなかなか難しい判断なのではと理解はできなくはありません。
ここでは政治的な話での決着は望みませんので、これ以上は書きませんが近い将来、この答えが明確に出るかもしれませんね。
まとめ
今後は大量生産大量消費の時代から、いかに持続可能性をもった経営をできるかが、全産業に求められている時代に移行しています。
そのため、ファストファッションにおいても、1つの有力な企業が製造する安価で良質な衣服という視点だけで選択するのではなく、その企業のコンセプトや取り組みに共感できる衣服を選択する時代に移行していきていると言えます。
ぜひ、自分の共感できるコンセプトを持つ企業を探し、環境に優しい衣服を着ていたいものですね。
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